曲紹介
3rd PIANO CONCERT にて、私が演奏する曲目についての情報です。
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フランツ・リスト作曲
ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
Hungarian Rhapsody No..2 in C-sharp minor
愛の夢 第3番
Liebestraum No.3
ピアノ・ソナタ ロ短調
Piano Sonata in B minor
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F.Liszt
(1811~1886)
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ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
Hugarian Rhapsody No.2 in C-sharp minor
リストはハンガリーで生まれ、オーストリア・ドイツ・フランスなどヨーロッパ各地で活躍したピアニストです。ドイツ語で育ち、フランス語も得意でしたが、ハンガリー語は話せなかったと言います。それでも彼は、ハンガリーに愛国心を抱き、自分はハンガリーの作曲家だと言っていました。
当時ハンガリーで演奏していたロマの音楽に触れ、これこそ、祖国ハンガリーの音楽だと思ったリストは、そのフレーズを使って、『ハンガリー狂詩曲』を19曲書きました。
中でも第2番は大変有名で、様々な場面で使われています。最近だと、ジャグラーがボールを使って、キーボードでハンガリー狂詩曲を演奏しているTVCM(FUJI XEROX)がありますね。
残念ながら鍵盤はでたらめですが(笑)、人々に親しみのあるフレーズと軽快なテンポで、自然と気分がウキウキしてくる、そんなこの曲のよさが表われています。
私のイチオシは、アメリカのアニメ「トムとジェリー」の、その名も『ピアノコンサート』♪
トムがかっこよくピアノを弾き始めるのですが、ピアノの中ではなんとジェリーがすやすや寝ています…演奏を続けながら、2人は鍵盤の上で大げんか!?
なるほど、次々に出てくる難しい音型が、見事に2人のやりとりとピッタリ!
思わず笑えてしまうアニメです。
ハンガリー狂詩曲の構成は、ほとんどの曲が
前半・・・ラッシャン Lassan (緩やかで哀愁に満ちた)
後半・・・フリシュカ Friska (急速で激しい)
で成り立っています。
これはヴェルヴンコシュやチャールダーシュといった踊りの音楽スタイルが影響しています。調べていたらとてもかっこいい踊りを見つけました。
「Verbunk」募兵活動の中で生まれた男性の踊りだそうです。見事に揃っている全員の踊りと、即興的なソロの踊り、ノンストップで続く急速なテンポ、これは伴奏のバイオリンも大変そうです。人を惹きつける力がありますね。
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FUJI XEROX CM
トムとジェリー「ピアノコンサート」
ヴェルヴンク Verbunk
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愛の夢 第3番
Liebestraum No.3
この曲は、リストの作品の中でも最もよく知られている小品でしょう。
この曲のみで演奏されることがほとんどですが、第3番ということは、もちろん1番と2番があります。
3つのノクターン〈愛の夢〉
1.“Hohe Liebe” 第1番 崇高な愛
2.“Seliger Tod” 第2番 至福の死
3.“O lieb, so lang du lieben kannst!” 第3番 おお、愛せる限り愛せよ!
各曲の楽譜の冒頭には、詩が掲げられています。
そう、この作品はもともと歌曲集でした。リスト自身が作曲した3つの歌曲集を、さらにピアノ独奏版へ編曲して出来たのが、『3つのノクターン〈愛の夢〉』です。リストは、自他の作品問わず、よい素材は編曲・改訂を繰り返し、よりよい形を追求しました。彼の作品には編曲したものが数多くあります。
ノクターンといえば、ショパンの作品が大変有名です。ゆったりとしたテンポに、分散和音の伴奏と、甘美なメロディ。当時市民のピアノ愛好家のあいだで大流行していたそうです。愛の夢には、いかにもリストらしい、即興的なカデンツァや、幅の広いオクターブやアルペジオ奏法、手を交差させるなどの視覚的な演奏効果も取り入れられ、優美さと情熱を併せ持つ作品になっています。
第3番の元の歌曲の歌詞は、ドイツの詩人フェルディナント・フライリヒラートの「おお、愛せる限り愛せよ!」という詩です。愛の詩ではあるのですが、熱烈な愛という感じではなく、ちょっぴりブラックユーモアが含まれた詩になっています。
彼女は利発で快活、若いから仕方がないのかもしれませんが、たまに余計な一言や傷つくことをうっかり言ってしまうようです。男性が自分の心の内を、ちょっと皮肉を込めて、表しています。
「口には気をつけて。そんなに私を傷つけているとそのうち私が死んでから後悔するよ。あぁ、あのときもっと愛しておけばよかった、と!もしかしたら私からお前を振ってしまうかもしれないし。死んでから謝ろうと思っても遅いよ、後悔先に立たず、なのだから。」
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愛の夢第3番 原曲
〈おお、愛せる限り愛せよ!〉『歌曲版』
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O lieb, so lang du lieben kannst! |
おお、愛せる限り愛せよ!
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O lieb, so lang du lieben kannst!
O lieb, so lang du lieben magst!
Die Stunde kommt, die Stunde kommt,
Wo du an Gräbern stehst und klagst!
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おお、愛せる限り愛せよ!
おお、愛したい限り愛せよ!
その時は来る その時は来るのだ
おまえが墓のかたわらでたたずみ 嘆き悲しむ時が! |
Und sorge, daß dein Herze glüht
Und Liebe hegt und Liebe trägt,
So lang ihm noch ein ander Herz
In Liebe warm entgegenschlägt!
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そして注意せよ、心が赤々と燃え
愛をはぐくみ 愛を抱くようにと。
まだなお 誰かの心にがおまえの心に
思い焦がれ 愛が温かくそそがれる限り! |
Und wer dir seine Brust erschließt,
O tu ihm, was u kannst, zulieb!
Und mach ihm jede Stunde froh,
Und mach ihm keine Stunde trüb!
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そしておよそおまえに胸をひらく人を、
おお、できる限り愛せよ!
そして どんな時も彼を悦ばせ
どんな時にも 彼を暗い気持ちにさせるな! |
Und hüte deine Zunge wohl,
Bald ist ein böses Wort gesagt!
O Gott, es war nicht bös gemeint -
Der Andre aber geht und klagt.
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そして、言葉づかいには気をつけよ、
ひどい言葉はすぐに口をすべる!
なんということだ、悪意はなかったのに―
彼は去り、嘆き悲しむ。 |
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ピアノ・ソナタ ロ短調
Piano Sonata in B minor
リストが書いた唯一のソナタ。リストは「技巧は目的ではなく、音楽のための手段にすぎない」と常々言っていた―その言葉通り、この作品は高度なテクニックと内面の表現が見事に結びついた、彼の最高傑作の一つです。
ソナタは本来複数の楽章で構成されていますが、リストのソナタは、多楽章の要素をもった単一楽章です。30 分に及ぶ大曲でありながら、その大部分が、冒頭で呈示される複数の主題の変容だけで成り立っています。これは「主題変容」というリスト特有の作曲技法を使って作られています。
ある主題のリズム・テンポ・調・アーティキュレーションなどに変化を加えることで、主題が持つ性格や気分を変えていく。それを全曲を通して機能させることで、曲に統一性をもたせている。全体としては単一楽章でありながら、アレグロの第1楽章、アンダンテの緩徐楽章、スケルツォ楽章、終楽章というソナタの側面も持っている。曲全体が緻密に計算された画期的な作品といえます。
この斬新なソナタは初演当初、「作曲家以外誰も理解出来ない」と批判を浴びましたが、技巧を超えた次元での楽曲の構築性・論理性が評価され、今ではロマン派を代表する重要なピアノ曲となっています。
ワーグナーはリストにあてた手紙で、こう絶賛している。「このソナタは、あらゆる概念を超えて美しい。偉大で、愛嬌があり、深く、高貴で― 君のように崇高だ」。
またこのソナタは、シューマンが『幻想曲O p.1 7』をリストに献呈してくれた返礼として、シューマンに捧げられている。 |
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